「体調が悪くても、病院に行くのをためらってしまう」。
そんな経験はありませんか。
問診票の「配偶者の有無」や
医師の何気ない「彼女はいる?」という一言が
ゲイ男性には思った以上に重く響くことがあります。
パートナーのことを聞かれたらどう答えよう
検査のときに性的指向を話す必要が
あるのだろうか——そんな不安から
受診そのものを先延ばしに
してしまう方も少なくありません。
この記事では現役看護師の視点から
医師に何をどう伝えればよいか
そしてパートナーとの関係を
医療の場でどう守っていけるかを
公的な資料をもとにお伝えします。

なぜゲイ男性は病院受診に不安を感じるのか
日本の医療機関では
問診の多くが
「異性の配偶者やパートナーがいる」ことを
前提に組み立てられています。
受付での名前の呼ばれ方問診票の性別欄
「結婚されていますか」という
何気ない質問——その一つひとつが
答え方に迷う場面になり得ます。
厚生労働省の委託事業による調査でも
性的マイノリティ当事者が抱える困りごととして
「プライベートの話をしづらい」
「異性愛者としてふるまわなければならない」
「健康診断を受けづらい」
といった声が報告されています。
これは職場を対象にした調査ですが
医療機関の受付や診察室でも同じ心理が
働くことは想像に難くありません。
誰かに知られたくない
詮索されたくないという気持ちは
決して特別なものではなく
多くの当事者が感じている自然な反応です。
さらに厄介なのは
「言わなければ誤解されたまま」
「言えば踏み込まれるかもしれない」という
どちらを選んでも落ち着かない板挟みの感覚です。
実際には
性的指向を伝えるかどうかは
患者本人が決めてよいことであり
必要がなければ無理に話す必要はありません。
一方で服薬内容や感染症のリスク検査歴など
医学的に関係のある情報であれば
伝えておいたほうが適切な診断や
治療につながる場合もあります。
不安の正体を知っておくだけでも
受診へのハードルは少し下がります。
私自身
看護師として多くの患者さんの
問診に関わってきましたが
「聞かれたくないことを聞かれるかもしれない」
という緊張感だけで
受診を先延ばしにしてしまう方を
何人も見てきました。
まずは
その不安が自分だけのものではないと
知ることから始めてみてください。
こうした緊張感が積み重なると
体調の変化があっても「また今度でいいか」と
受診そのものを後回しにしてしまい
結果として症状の発見や治療開始が
遅れてしまうこともあります。
特に性感染症の検査のように
人によっては話題にしにくいと感じる項目があると
受診のハードルはさらに上がりがちです。
不安を抱えたまま我慢を続けるより
不安の中身を具体的に言葉にしてみることが
次の一歩につながります。
医師に何をどう伝えればいいか
結論から言えば
カミングアウトのように身構えて伝える必要はありません。
多くの場合
必要なのは「医学的に関係のある範囲」の情報だけです。
たとえばパートナーが男性であること
特定の検査を定期的に受けていること
服用中の薬があることなど
診断や治療方針に関わる事実を
簡潔に伝えれば十分です。
「男性のパートナーがいます」
「検査のために伝えておきたいことがあります」
といった一言があるだけで
医師は適切な判断材料を得られます。
海外の調査では性的指向の開示は雑談の延長のように
軽く間接的に伝えられることが多いとも報告されています。
かしこまって切り出す必要はなく
問診の自然な流れの中で
触れるくらいで十分だということです。
また
医師が「異性のパートナーがいる」前提で
質問してきた場合も
訂正することに引け目を感じる必要はありません。
「パートナーは男性です」と一言添えるだけで
その後のやり取りはスムーズになります。
どこまで話すかは
そのときどきで自分が決めてよいことです。
初診のすべてを話す必要はなく
必要な検査や治療に関わる範囲に絞ってかまいません。
逆に開かれた雰囲気で対応してくれる医師であれば
安心して詳しく話せる場面も増えていくはずです。
もし心ない対応をされた場合は
我慢して通い続ける必要はなく
別の医療機関を探すという選択肢が
あることも覚えておいてください。
自分の体のことを正確に
伝えられる関係を医師と築けるかどうかは
長い目で見た健康管理に大きく関わってきます。
言葉に詰まりそうで不安なときは
伝えたい内容を事前にメモにして持参し
口頭で言いにくければそのメモを
渡すという方法も有効です。
信頼できる友人やパートナーに付き添ってもらい
言いにくいことは代わりに
切り出してもらうという工夫を
している方もいます。

パートナーとの関係を医療の場でどう守るか
体調不良そのものより
「もしものとき、パートナーが家族として扱ってもらえるのか」
という不安のほうが大きい
という声も少なくありません。
東京都総務局人権部が公開している資料では
医療分野における性的マイノリティ当事者の困りごととして
入院時の面会や付き添い
診療情報の説明をパートナーと一緒に聞きたいという希望
本人の意識がないときの手術同意
パートナーによる入院手続きの代行や
緊急連絡先としての指定などが挙げられています。
同資料は医療機関に向けて
パートナーシップ宣誓制度の受理証明書が
示された際には二人の意思を尊重し
相談内容は重要な個人情報としてアウティング防止に
配慮するよう呼びかけています。
このような制度は東京都だけでなく
全国の自治体に広がっており
沖縄県内でも
那覇市がパートナーシップ登録制度を設けています
(利用には双方が市内在住であることなど条件があります)。
ただし制度の有無や
医療機関がどこまで対応してくれるかは
病院によって運用が異なるのが実情です。
入院や手術が想定される場合は
事前に病院の相談窓口や地域医療連携室に
緊急連絡先やパートナーの
立ち会いについて直接確認しておくと
いざというときに慌てずに済みます。
制度の宣誓書や証明書がなくても
本人の意思確認ができれば柔軟に
対応してもらえるケースもあります。
大切なのは一人で抱え込まず
元気なうちに「もしものとき、どうしてほしいか」を
パートナーと話し合い
必要であれば医療機関にも伝えておくことです。
備えておくことは不安を減らすだけでなく
パートナーへの思いやりの形にもなります。
話し合った内容は口約束で終わらせず
簡単なメモや書面として残しておくと
いざというときに家族や医療者に
意思を伝えやすくなります。
終活やエンディングノートの作成とあわせて
医療に関する希望を整理しておくご夫婦や
カップルも増えてきました。
安心して相談できる医療機関・窓口の探し方
すべての医療機関が性の多様性に
理解があるとは限りませんが
安心して相談できる場所を
見つける方法はいくつかあります。
まず
受診前に電話やウェブサイトで
「性的マイノリティへの配慮について相談したい」と
伝えてみるのも一つの方法です。
対応が丁寧であれば、実際の診察でも安心感が違います。
また各地の保健所や自治体の人権相談窓口では
性の多様性に関する一般的な相談を
受け付けていることがあります。
医療機関そのものの紹介は
できない場合もありますが
地域の相談先や制度について
教えてもらえることがあります。
通称名を使っている方は
受付での呼び方について事前に
相談できる病院も増えてきました。
小さな配慮であっても
それが積み重なることで通いやすさは大きく変わります。
もし今かかっている医師との
間で話しにくさを感じているなら
無理に我慢を続ける必要はありません。
セカンドオピニオンを取る別の医療機関に変える
という選択はわがままではなく
適切な医療を受けるための正当な権利です。
当事者コミュニティやSNSでの
口コミ情報も参考にはなりますが
個人の感想であることを踏まえ
最終的には自分自身の目で確かめることをおすすめします。
沖縄にも
性の多様性への理解を深めようと
している医療従事者は確実に増えています。
一人で探すのが難しいと感じたときは
信頼できる人や専門職に相談しながら
自分に合った医療との付き合い方を探していってください。
最近はオンライン診療を取り入れる医療機関も増えており
対面での会話に緊張しやすい方にとっては
まず画面越しに相談してみる
という選択肢も広がっています。
どの方法を選ぶにしても
自分が落ち着いて話せる環境を優先してよいのだと
まずは知っておいていただきたいと思います。
心の備えとセルフケア
病院への不安は体の不調そのものよりも
「理解されないかもしれない」という孤独感と
結びついていることが多いように感じます。
これは私が看護師として30年以上
現場で感じてきた実感でもあります。
誰にも言えないまま一人で抱え込む時間が長くなるほど
心も体も余計に緊張してしまうものです。
だからこそパートナーや信頼できる友人
専門の窓口など
話せる相手を一つでも持っておくことが
何よりのセルフケアになると私は考えています。
完璧に準備する必要はありません。
伝えたいことをメモに書き出しておくだけでも
診察室での緊張はやわらぎます。
年齢を重ねるほど体のこともこれからのことも
一人で抱えるには荷が重くなっていきます。
だからこそ
早いうちから「話せる場所」を持っておくことが
将来の安心につながります。
鎧を脱いで本来の自分のまま医療とつながれる社会を
少しずつでも広げていきたい——これは
看護師としてもこのブログを書く一人としても
変わらない願いです。
長年現場に立っていると
病気そのものよりも
「誰にも相談できなかった時間の長さ」が
心身の負担を重くしているように
感じる場面が少なくありません。
不安を抱えたまま一人で頑張り続ける必要はなく
少しずつ頼れる先を増やしていくことも
立派なセルフケアのひとつです。
那覇市で男性専門のリラクゼーションサロンを営む中で
こうした医療への不安やパートナーとの関係の悩みを
打ち明けてくださる方にもたくさん出会ってきました。
一人で抱え込まず
心と体をゆるめる時間が必要だと感じたときは
ほぐ・ルル/G-VITAL沖縄男の保健室
(https://hogululu.com/)にもお気軽にお声がけください。
自宅でできるセルフケア教材を
でも販売しています。
よろしければのぞいてみてください。
ゲイ男性にとって病院受診は
体調管理だけでなくパートナーとの関係や
知られたくない情報をどう扱うかという
不安と隣り合わせです。
医師に伝えるべきは医学的に関係のある範囲だけでよく
話す内容も範囲も自分で選んでかまいません。
東京都の資料にあるように
パートナーを家族として尊重しようと
する動きは医療機関にも広がりつつあり
沖縄でも那覇市にパートナーシップ制度があります。
制度任せにせず事前に病院へ確認し
パートナーと話し合っておくことが
いざというときの安心につながります。
一人で抱えず話せる相手や場所を持つことを
どうか大切にしてください。

コメント